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ヒストリーof社労士

» vol23. 新団体の使命は法改正

 これまでは、社労士制度が生まれるまでと、生まれてからの団体間の確執など制度の歴史を述べてきたが、10年にわたる抗争がなぜ生じたのか、これはひとえに法律そのものが整備されていなかったからに他ならない。
 統一された新団体、全社労がその設置から立ち向かわなければならなかったのは、社労士法の改正であり、1日も早く他の士業界と比肩し得るような法律に整えることであった。
 全社労の使命は会をあげて社労士法改正へ全力投球することにあったのである。
 法改正に向けての全社労の動きを追ってみよう。
 51年9月7日設立総会を開き、11月16日厚生・労働両大臣から社団法人の許可がおりた全国社会保険労務士会(略称全社労)は、まず、組織の整備と強化に努めた。
 この結果、52年3月末現在で44都道府県会が設立され、会員数16,554人、このうち1号会員(開業者)6,666人、2号会員(非開業者)9,890人を数えるに至った。
 この時機にはまだ結成されていなかった徳島会、香川会、京都会の52年7月11日の京都会結成を最後に全国都道府県会の設立が実現したのである。
 会員数もこの時点で1号6,837人、2号9,329人の計16,166人となった。前年に比べ388人減ったことになるが、これは過去の両団体の重複会員の整理による適正会員の把握、脱会者等によるものである。
 また、この年2月、社労士法改正のための「法改正委員会」が設置され、改正要綱等の検討、関係方面への陳情、要請などを行っている。52年度総会で決議された法改正要綱に基づき法改正委員会で討議された「社会保険労務士法の一部を改正する法立案」を作成し、早期実現をかけて、会の総力をあげて運動を展開した。
 また、この通常総会終了後「社会保険労務士制度推進連盟」が設立された。
 52年通常総会で決議された法改正方針は、全国を通じて一つの法定登録団体を設ける(法定登録団体)こと、社労士の法定登録への登録(登録)、労働社会保険諸法令に関する業務のうち、申請、報告、不服申立等について依頼者に代理し自らの責任のもとで適正迅速に業務を処理することができる(業務代理)の3点が大きな柱だった。
 改正法案は議員立法として提出され、53年5月9日、衆院本会議で可決、同月12日参院本会議でも満場一致で可決成立をみたのである。
 なお、衆参両院とも改正法案の可決にさいし、次の附帯決議が採択されている。

 

「社労士制度の改善に関する特別(附帯)決議」

1 社会保険労務士の免許制度については社会保険労務士会の組織状況、全国社会保険労務士会連合会の事務処理能力等を勘案し、できるだけ早い機会に、全国社会保険労務士会連合会による登録制度への移行措置を講ずるものとすること。
2 社会保険労務士と行政書士のそれぞれの資格制度及び業務分野の独自性にかんがみ、近い将来、社会保険労務士の業務の完全な分離を図る措置を講ずるものとすること。

 

 改正された社労士法(53年9月1日施行)を受けて、政省令と通達が管轄省庁から出され、とくに改正法の目玉となった法第2条第1項第1号の2の「その提出に関する手続を代わってすること」を「提出代行事務」と称し、その内容と取り扱いが明らかになった。
 これまで行政庁の提出書類に対する質問や確認は任意であったものが、今後は法の規定によることになり、責任が重くなったと同時に法的立場も一段と確立された。また行政書士の資格ではこれらの提出代行事務はできないとされ、社労士の専門領域が確立された。
 この第1次法改正によって全社労は全国社会保険労務士会連合会(全社連)として発足した。全社連としては、この第1次改正で法定団体と提出代行事務が実現したが、これに満足することなく、第1次法改正で積み残しとなった免許制度から登録制度への移行、行政書士との完全業務分離などを中心とする第2次法改正へ向けて休む間もなく本格的な取り組みを開始したのである。
 この法改正によって全社労東京会と中央会が対等合併により円満に解決したことは前述したとおりである。
 社会保険労務士法定団体の悲願は達成したが、開連士業との間に、昭和43年の法成立時の頃のギクシャクした関係が再現しそうになったのである。
 行政書士に関しては、43年の法制定に際して、(1)法施行の際6ヶ月以上行政書士会の会員である行政書士に対して社労士の資格を付与し、(2)行政書士の資格で労働社会保険諸法令に基づく書類の作成事務に従事できることとする
という大幅な妥協案で日行連との軋轢を交わした経緯は前にも述べた。
 第一次改正に際して全社労案では社労士の専門領域の確立をはかる意味から、これまでの過渡的な措置を廃止して行政書士の資格だけでは社労士業務を行うことはできない、ことを明文化していた。
 全社労と日行連は度々会合を持ち、その過程で「行政書士であって現に社労士業を行っている者の既得権については当分の間これを認めるという趣旨の経過措置を盛り込むことで妥協をはかったが、結局了解が得られず、日行連は下部組織をあげて社労士法改正反対の請願運動を展開するに至った。また、日税連も「全社労非会員の業務制限」に反対して請願運動を展開している。
 このような関連士業からの反対の中で第1次法改正が成立したわけだが、先に述べた衆参両院の附帯決議はこうした背景から生まれたものであった。
 なぜ行政書士との間で業務分離を必要とされたのだろうか。
 法制定から10年を経たこの時点で、労働社会保険事務はますます複雑かつ多岐にわたるようになり、行政書士の持つ知識、経験では専門家した社労士の仕事を行うことは困難となっていた。また、それを裏付けるように、この時点で行政書士で社労士業務を行っている者は極めて限られていた。そこで社労士の専門領域の確立をはかることが第1次の主要項目になっていたのである。

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