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法令改正最前線(第77回 『労働時間法制の見直しに向けて』)
<滝 則茂 氏>
1 労働基準関係法制研究会の動向
厚生労働省は、今後の労働基準関係法制についての中長期的な検討と、働き方改革関連法附則12条に基づく労働基準法等の見直しについての具体的な検討を行うために、2024年1月に学識経験者による「労働基準関係法制研究会」(以下、「本研究会」とします。)を立ち上げました。
本研究会は、2024年12月までに既に16回開催されています。同月24日に開催された研究会においては、これまでの検討の成果を取りまとめた研究会報告書の案が提出され、インターネットで公表されています。今後は、労働政策審議会労働条件分科会の場で公・労・使の三者による審議が行われることになると思われますが、その際の指針となるのが、本研究会報告書の提言内容です。
そこで本稿においては、本研究会報告書のうち、社労士実務との関わりが強い「Ⅲ労働時間法制の具体的課題」の部分に的を絞り、近い将来の労基法等の改正を意識した記述の重要ポイントを紹介することとします。
2 労働時間法制の具体的課題
・テレワーク等の柔軟な働き方
ここでは、テレワークに適用できるより柔軟な労働時間管理ということで、①テレワークの実態を踏まえてフレックスタイム制を見直すことができないか、②労使合意(集団的合意に加え個別の本人同意)と健康確保措置を条件に、テレワークに限定したみなし労働時間制を導入できないかが課題とされています。
・法定労働時間週44時間の特例措置
特例措置の対象事業場の8割以上が特例を使っていないという現状に鑑み、撤廃に向けた検討に取り組むべきであるとしています。
・実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置
裁量労働制や高度プロフェッショナル制度においては、健康・福祉確保措置が設けられているが、管理監督者等については設けられていないので、この点につき検討に取り組むべきであるとしています。
・休日
精神障害の労災認定基準(2週間以上にわたる休日のない連続勤務は、心理的負荷となる具体的出来事の一つとされている)を踏まえ、2週間以上の連続勤務を防ぐという観点から、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労基法に設けるべきであるとしています。
また、「法定休日の特定」について、現行の通達による指導では不十分であり、「あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上に規定する」ことに取り組むべきだとしています。
・つながらない権利
緊急事態の発生等により、勤務時間外の対応が求められる場合に、「どのような連絡までが許容でき、どのようなものは拒否することができることとするのか」に関する社内ルールを労使で検討していくことが必要であり、このような話し合いを促進すべく、ガイドラインの策定等の検討を提言しています。
・副業・兼業の場合の割増賃金
現行の厚生労働省のガイドラインに基づく労働時間の通算に関する取扱い(割増賃金の計算につながる)が複雑であり、これが副業・兼業の許可・受入れの障壁になっているとの指摘を踏まえ、「労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払いについては、通算を要しない」よう、制度改正を提言しています。
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