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法令改正最前線(第70回 『新しい時代の働き方に関する研究会報告書』)
<滝 則茂 氏>
今回は、10月20日に厚生労働省から公表された「新しい時 代の働き方に関する研究会」の報告書を取り上げることとします。
1.本報告書が登場した経緯
この研究会は、働き方や職業キャリアに関するニーズ等を把握しつつ、新しい時代を見据えた労働基準関係法制度の課 題を整理することを目的とするもので、法令改正という観点 からみると、主に、労働基準法、労働安全衛生法につき、将来の改正を意識した論点整理が行われています。
本報告書は、本年3月から10月まで、計15回にわたって開催されたこの研究会における議論の成果を取りまとめたもの で、以下の4つの項目によって構成されています。
第1 本研究会の契機となった経済社会の変化 |
本稿では、上記のうち第3の項目の中から、今後の法改正、 労務管理との関わりで注目すべきテーマをピックアップし、着目点を紹介します。
2.新しい時代に即した労働基準法制の方向性
〈働く人の健康確保〉
近年の働き方の変化(たとえば、リモートワークの普及)を 踏まえ、「労働者の心身の健康への影響を防ぐ観点から、勤務時間外や休日などにおける業務上の連絡等の在り方について も引き続き議論がなされることが必要である」としています。 また、企業が労働者の健康管理を行うに当たり、「業務遂行に直接関わる部分を超えて労働者の健康に係る情報をどこまで企業が把握してよいかについても課題であり、検討することが必要である」としています。
〈働く人の選択・希望の反映が可能な制度へ〉
リモートワーク等により職場の概念が変わり、従来の雇用管理・労務管理では対応が難しくなっている場合、フリーラ ンスなど雇用によらない働き方をする者等、従来の労働基準 法制では有効に対応できない場合など、働き方の変化に伴い、「労働基準法制定当時では想定されなかった新たな課題が起きているので、それらのことも念頭に、それぞれの制度の趣 旨・目的を踏まえ、時代に合わせた見直しが必要である」とし ています。
また、働き方の個別・多様化の進展、非正規労働者の増加、 労働組合組織率の低下等を踏まえると、多様な働く人の声を 吸い上げ、労働条件決定に反映させるためには、「現行の労働 基準法制における過半数代表者や労使委員会の意義や制度の 実効性を点検した上で、多様・複線的な集団的な労使コミュ ニケーションの在り方について検討することが必要である」としています。
〈労働基準法制における基本的概念が実情に合っているかの確認〉
フリーランスなど個人事業主の中に、労働者と類似の働き 方をしている者がいること、リモートワークが広がるとともに、オフィスによらない事業を行う事業者が出現してきていることなどから、事業所単位で捉えきれない労働者が増加していることを考慮し、「『労働者』、『事業』、『事業場』等の労働基 準法制おける基本的概念についても、経済社会の変化に応じて在り方を変えていくことが必要である」としています。
3.今後の流れ
11月13日の労働政策審議会労働条件分科会で、この報告書に関する報告が行われました。今後は、この労政審の分科会で、審議がなされるものと思われます。