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法令改正最前線(第76回 『女性活躍推進法等改正の動向』)
<滝 則茂 氏>
今回は、労働政策審議会において審議中の女性活躍推進法等の改正の動向について紹介します。
1 「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」における検討
厚生労働省は、令和元年に成立した女性活躍推進法等改正法の施行後の状況を踏まえ、①雇用の分野における女性活躍推進の方向性、②ハラスメントの現状と対応の方向性等について議論するため「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」を立ち上げました。この学識経験者による検討会は、本年2月29日から8月1日にまで計11回にわたり議論を積み重ね、その成果を報告書に取りまとめ、8月8日に公表しました。
この報告書の内容は多岐にわたりますが、たとえば、以下のようなテーマが注目されます。
(1)女性活躍推進法については、10年間期限を延長することが適当
(2)女性活躍に関する情報公表のうち、男女間の賃金差異については、101人以上300人以下の企業においても公表を義務付けるのが適当
(3)カスタマーハラスメントについては、対策強化が必要で、労働者保護の観点から事業主の雇用管理上の措置義務とすることが適当
(4)就活等セクシュアルハラスメントハラスメントについても、事業主の雇用管理上の措置が講じられるようにしていくことが適当
2 労働政策審議会における審議
上記の検討会報告を踏まえ、労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、9月13日から「女性活躍推進及びハラスメント対策」についての審議が始まっています。以下、11月8日の第75回分科会での配布資料「これまでの労働政策審議会雇用環境・均等部会での主な御意見」を参考にして、上記4つのテーマについて、審議会での審議の現状を紹介することとします。
(1)女性活躍推進法は2025年度までの時限立法となっていますが、それを10年間延長し、2035年までとすることについては、特に異論は出ていないようです。
(2)男女間賃金格差に関する情報公表の対象企業の拡大については、女性活躍という観点から積極的に推進すべきだとする意見がある一方、中小企業の現状からは時期尚早ではないかといった趣旨の意見もあり、労使間で意見が分かれているように見受けられます。
(3)カスタマーハラスメント対策の強化という点については、措置義務の法制化も含め特に異論はないようで、業界や業種の特色を踏まえたきめ細かな対策が望まれているようです。
(4)就活等セクシュアルハラスメント対策についても、法整備を進めていくという方向性について、特に異論はないようです。
3 今後の見通し
来年1月に召集される通常国会において、女性活躍推進法等の改正法案が提出されると思われます。前回同様、ハラスメント対策についても一括した形の法案になるのではないでしょうか。上記の4つのテーマに関しては、少なくとも女性活躍推進法の延長とカスタマーハラスメントの法制化は法案に盛り込まれるものと考えられます。なお、カスタマーハラスメントの法制化については、労働環境に関する問題ということで、パワーハラスメントと同様、労働施策総合推進法の中に規定が設けられるのではないでしょうか。