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法令改正最前線(第73回 『労働基準関係法制研究会の動向』)

<滝 則茂 氏>

法改正は概ね「審議会等討議」「法律案提出・可決」「法律施行」の流れで進みますが、それぞれの段階でお客様に周知することで、規定改定等の意識付けを強めることができます。また、法改正に至った社会的背景を把握することにより、より深くお客様に説明することが可能です。
この『法令改正最前線』コーナーでは、法改正のポイントを押さえつつ、その周辺の情報にも触れることによって、お客様へ説明する際の一助となることを目的としております。

この研究会は、今後の労働基準関係法制の法的論点を整理し、労働基準法等の見直しを検討するものです。厚生労働省労働基準局が所管しており、10名の学識経験者(全員が大学教員)によって組織されています。

1 研究会の趣旨・目的
2023年3月から、新しい時代を見据えた労働基準関係法制の課題を整理することを目的とする「新しい時代の働き方に関する研究会」が開催され、同年10月に報告書が取りまとめられました。また、働き方改革関連法附則12条では、改正後の労働基準法等について、施行状況等を勘案しつつ検討を加え、必要があれば、所要の措置を講ずるとされていす。
そこで、「新しい時代の働き方に関する研究会」報告書及び働き方改革関連法の施行状況を踏まえ、今後の労働基準関係法制についての中長期的な検討と、働き方改革関連法則12条に基づく労働基準法等の見直しについての具体的な検討を行うために、「労働基準関係法制研究会」(以下、「本研究会」とします。)が開催されることとなりました。

2 本研究会のこれまでの動向
本研究会は、本年1月23日からスタートし、5月10日までに既に7回開催されています。4月22日に開催された6回目の研究会では、「これまでの議論の整理」と題する資料が配布され、インターネットで公表されています。この資料に目を通すことによって、次期の労働基準法等の改正の方向性がある程度見えてくるのではないかと思われます。
この資料によれば、本研究会では、①労働時間法制、②労働基準法の「事業」、③労働基準法の「労働者」、④労使コミュニケーションという4つの論点につき、検討が行われています。

3 これまでの議論の整理
本稿では、上記資料に基づき、社労士実務との関わりが強い「労働時間からの解放の規制」につき、研究会で出された意見の例をいくつか紹介することとします。

〈法定休日制度〉
・法定休日の特定や1週1休の原則を貫くことを含めて4週4休制の廃止・改善について、制度の要件を明確にすることを含め検討すべき

〈勤務間インターバル制度〉
・インターバルの時間は、科学的にみて11時間を基本に考えるべき方向ではないか
・勤務間インターバル制度については、罰則付きの義務規定を法に設けるのではなく、現場の労使で話し合い、実現可能な取り組みの導入を広げていく方向ではないか

〈年次有給休暇制度について〉
・年次有給休暇の時間単位取得については、労使双方にニーズはあるが、制度の本来の趣旨や、労働者の心身の疲労回復効果の面からは疑問がある
・労働者が自身の持つ年次有給休暇の残日数を把握していないケースが多いことも問題であり、可視化が必要と考えられる

〈休憩について〉
・労働基準法34条では休憩は一斉に付与することとされ、分ける場合は労使協定が必要とされているが、これは当時の工場労働を前提としたものであり、現代では交代で休憩を取ることは当たり前であって、一斉休憩原則の例外を労使協定でなければ認めないとまでする必要はないのではないか
・休憩時間は、6時間労働につき45分、8時間労働につき1時間という規定があるのみであるため、もっと労働時間が長い場合にこのままでよいか

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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