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法令改正最前線(第71回 『新しい時代の働き方に関する研究会報告書』)
<滝 則茂 氏>
今回は、多岐にわたる制度改正が予定されている雇用保険制度見直しの動向について述べることとします。
1.見直しに至る経緯と今後の見通し
雇用保険制度に関しては、新型コロナ感染症対策の特別対応が一段落したこともあり、社会経済情勢の変化を踏まえた相応の見直しが求められるようになってきました。厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会の雇用保険部会は、昨年の9月5日から本年の1月5日まで、雇用保険制度の見直しについて幅広く検討を行い、その結果を報告書に取りまとめ、1月10日に職業安定分科会に報告を行っています。この報告を踏まえ、厚生労働省は、「雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱」と「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(雇用保険法等の一部改正関係)要綱」を作成し、1月12日に厚生労働大臣が労働政策審議会に諮問を行っています。
今後は、労働政策審議会の答申を経て、雇用保険法等の改正法案が作成され、本年の通常国会で審議されることになると思われます。
2.制度見直しの重要ポイント
今回の制度見直しに係る改正予定事項のうち、社労士として特に押さえておきたいものに絞って、そのポイントを紹介します。
①雇用保険の適用対象者の範囲の拡大(令和10年10月施行予定)
1週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満の者を新たに雇用保険の対象者に加えるとされています。これに連動して、たとえば、基本手当の被保険者期間の計算に当たり、賃金支払基礎日数が6日以上であるもの又は賃金支払の基礎となった時間数が40時間以上であるものを1か月として計算するなどの見直しが行われます。
②自己都合離職者の給付制限期間の見直し(令和7年4月施行予定)
正当な理由のない自己都合離職者に対する基本手当の給付制限期間について、従前の原則2か月から原則1か月へと短縮します。
③就業手当の廃止(令和7年4月施行予定)
就業促進給付のうち、受給資格者が安定した職業以外の職業に就いたときに支給される就業手当については、ニーズが非常に低いこともあり、廃止します。
④教育訓練休暇給付金の創設(令和7年10月施行予定)
一般被保険者が、職業に関する教育訓練を受けるため、企業の制度を利用して無給の休暇を取得した場合に、基本手当に相当する保険給付を受けられる制度を創設します。
⑤出生後休業支援給付金の創設(令和7年4月施行予定)
子の出生後一定の期間(男性:子の出生後8週間以内、女性:産後休業後8週間以内)に、14日以上の育児休業を取得する場合に、28日間を限度に、休業開始前賃金の13%相当額を支給する制度を創設します。この給付の支給期間については、従来からの育児休業給付と併せ、休業開始前賃金の80%相当額の給付となります。
⑥育児時短就業給付制度の創設(令和7年4月施行予定)
被保険者が2歳未満の子を養育するため、所定労働時間を短縮することによる就業をした場合、育児休業給付に準じ、時短勤務開始日前2年間にみなし被保険者期間が通算12月か月以上あるときに給付を行うこととします。給付の水準は、時短勤務中の各月に支払われた賃金額の10%を上限とし、給付額と賃金額との合計が時短勤務開始前の賃金を超えないよう、調整されます。