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法令改正最前線(第58回 『多様化する労働契約のルールに関する検討会』)

<滝 則茂 氏>

 この検討会は、無期転換ルール(労働契約法18条)の見直しと、多様な正社員の雇用ルールの明確化等について検討を行うものです。厚生労働省労働基準局が所管しており、7名の学識経験者(全員が大学教授)によって組織されています。

1.検討会の趣旨・目的
 労働契約法(平成24年改正法)附則3項では、法施行(平成25年4月)後8年を経過すると、法18条の無期転換ルールにつき、「その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、必要な措置を講ずるもの」とされています。また、勤務地限定正社員、職務限定正社員等「多様な正社員」については、規制改革実施計画(令和元年6月閣議決定)で、令和2年度中に雇用ルールの明確化につき検討を開始するとされています。
 そこで、無期転換ルールの見直し、多様な正社員の雇用ルールの明確化等の検討を行うことを目的として「多様化する労働契約のルールに関する検討会」が開催されることになりました。

2.検討会のこれまでの動向
 この検討会は、令和3年3月24日からスタートし、毎月1回のペースで開催されており、直近の11月12日の検討会は、第9回目となっています。第2回目以降を大きな流れでみると、
・企業・労働組合や有識者からのヒアリング(第2回~第4回)
・実態調査の結果報告と質疑(第5回)
・無期転換ルールに関する論点の検討(第6回~第8回)
・多様な正社員の雇用ルール等に関する論点の検討(第9回~)
 このような流れをたどっています。

3.無期転換ルールに関する論点
 検討によって浮かび上がってきた、無期転換ルールに関する「論点」については、第8回検討会の資料として整理され、公表されています。その冒頭にある「論点一覧」の項目の中から興味深いものを2つ紹介します。

〈無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保〉
 ここでは、無期転換ルールの周知の徹底を期すべく、たとえば、「使用者からの個別の転換申込機会の通知」などが問題になっています。近年の労働立法や最高裁判例の傾向をみると、「情報弱者としての労働者保護」という流れが明確になっており、使用者から労働者への通知の制度化は、まさにこの流れにマッチするものといえます。
 また、転換を希望するか否かに関する判断材料の提供、さらには転換後のトラブル防止という観点から、「無期転換後の労働条件の明示」についても、問題になっています。

〈無期転換前の雇止め等〉
 現実の雇用社会においては、無期転換前の雇止め等、無期転換回避策ともいうべき措置が取られることが少なくありません。たとえば、「あらかじめ5年以内の更新上限を設ける」このようなケースについてどう考えるのか、「無期転換申込を行ったこと等を理由とする不利益取扱い」についてどのように対応していくのか、等につき、検討が行われています。労使の利害が正面から対立する論点であり、立法による対応は必ずしも容易ではないでしょう。

4.今後の見通し
 論点の検討が終わったところで、検討会の報告書という形で、法改正を意識した提言が行われ、労働政策審議会の審議を経た上で、労働契約法の改正に向けて進んでいくものと思われます。ただ、労使の利害対立がはっきりしている論点についての法改正は困難であり、この種の論点については通達等で対処することになるのではないでしょうか。

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社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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