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法令改正最前線(第53回『全世代型社会保障改革の方針』)

<滝 則茂 氏>

今回は、昨年の12月15日に政府から公表された「全世代型社会保障改革の方針」について、そのポイントを紹介します。

1.打ち出された方針の項目
「少子化対策」、「医療」について、以下の項目に関する方針が打ち出されました。

<少子化対策>
・不妊治療への保険適用等
・待機児童の解消
・男性の育児休業の取得促進
<医療>
・医療供給体制の改革
・後期高齢者の自己負担割合の在り方
・大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大

本稿では、「不妊治療への保険適用等」、「男性の育児休業の取得促進」、「後期高齢者の自己負担割合の在り方」について、打ち出された方針の内容とその実現に向けてのプロセスを紹介します。

2.不妊治療への保険適用等
現在、不妊治療に関しては、その原因が「疾病」に該当しない限り、医療保険の適用は認められません。そのため、多くの方は、不妊治療を受けるために高額の費用がかかっています。助成金が制度化されていますが、要件や金額について、必ずしも十分なものとはいえません。
このような現状を改善すべく、「不妊治療への保険適用を早急に実現する」との方針が明記され、具体的には、「令和3年度中に詳細を決定し、令和4年度当初から保険適用を実施する」としています。また、保険適用までの間のつなぎの措置としては、「現行の不妊治療の助成制度について、所得制限の撤廃や助成額の増額等、対象拡大を前提に大幅な拡充を行い、経済的負担の軽減を図る」としています。
このテーマについては、内閣の目玉政策の一つですから、今年中に法改正(健康保険法等の改正)が実現し、来年4月から施行される可能性が高いものと思われます。

3.男性の育児休業の取得促進
実は、このテーマに関しては、前回も本稿で取り上げています。今回打ち出された政府の方針においては、今年度から男性国家公務員に1か月以上の育児休業等の取得を求めていることを踏まえ、「民間企業でも男性の育児休業の取得を促進する」としています。具体的には、「出産直後の休業の取得を促進する新たな枠組み」の導入、「本人又は配偶者の妊娠・出産の申出をした個別の労働者に対する休業制度の周知の措置」の事業主への義務付け等につき検討するとしています。そして、今後の法改正に向けたプロセスとして、「労働政策審議会において結論を取りまとめ、令和3年の通常国会に必要な法案の提出を図る」との方針が示されています。

4.後期高齢者の自己負担の在り方
現在、後期高齢者の医療費自己負担は、原則1割(現役並み所得者は3割)ですが、本方針では、「後期高齢者支援金の負担を軽減し、若い世代の保険料負担の上昇を少しでも減らしていく」ことが最も重要な課題であるが、「その場合にあっても、何よりも優先すべきは、有病率の高い高齢者に必要な医療が確保されること」であるとの認識の下、この自己負担割合を見直すとされています。すなわち、「後期高齢者(現役並み所得者を除く)であっても課税所得が28万円以上かつ年収200万円以上(単独世帯の場合。複数世帯の場合は、後期高齢者の年収合計が320万円以上)の方に限ってその医療費の窓口負担割合を2割」とするとの方針が示されています。そして、この改革の施行時期については、「令和4年度後半までの間で政令で定める」とし、「令和3年の通常国会に必要な法案の提出を図る」としています。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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