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法令改正最前線(第52回『男性の育児休業取得促進』)

<滝 則茂 氏>

 今回は、男性の育児休業取得促進をめざす制度改正の動向について紹介します。

1.問題が発生してきた経緯
 我が国における女性の育児休業取得率は8割を超えていますが、男性の育児休業取得率は厚生労働省の最新の調査(令和元年度雇用均等基本調査)でも7.48%にとどまっています。このような事態を打開すべく、政府の「少子化社会対策大綱」(令和2年5月29日閣議決定)では、以下のような方針が打ち出されています。
 育児休業制度について、柔軟な取得を可能とするための分割取得の拡充を検討するとともに、配偶者の出産直後の時期を中心に、男性の休業を推進するための枠組みについて、取得しやすい手続や休業中の給付などの経済的支援等を組み合わせることを含めて検討する。
 厚生労働省では、このような基本方針を踏まえ、労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、男性の育児休業取得促進の方策について審議を行っています。この分科会での検討状況については、11月12日の分科会に提出された資料(厚生労働省のホームページで公表されています)によってポイントを掴むことができます。以下、この検討状況に関する資料の骨子を紹介します。

2.雇用環境・均等分科会での検討状況
①子の出生直後の休業の取得を促進する枠組み
 男性の休業の取得をより進めるため、子の出生直後の時期につき、現行制度よりも柔軟で取得しやすい仕組みを作ろうということで、たとえば、以下のようなものが提案されています。
・対象期間は、子の出生後8週とする。
・取得可能日数を限定する場合、4週間程度とする。
・申出期限を2週間程度とする(現行の育児休業は1ヵ月前が原則)
・分割取得を可能とする。
・あらかじめ予定した休業中の就労も可能とする。

②妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対する個別周知及び環境整備
・休業を取得しやすい職場環境の整備を事業主に義務付ける(研修、相談窓口設置など)。
・個別労働者への周知の措置を事業主に義務付ける(取得の働きかけ・意向確認、書面等による制度の情報提供など)。

③育児休業の分割取得
・分割を認める場合、2回程度取得可能とする。
・1歳以降の延長が認められる場合、延長した場合の休業開始日が各期間(1歳~1歳半、1歳半~2歳)の初日に限定されていることを見直す。

④育児休業取得率の公表の促進等
・各企業が育児休業取得率等の実績を公表していることをくるみんの認定基準とする。
・プラチナくるみんの育児休業率の基準等について、政府目標(30%)を踏まえて引き上げる(現在は、男性の育児休業取得率13%以上)。

3.今後の見通し
 近い将来、議論が煮詰まったところで、労働政策審議会の建議、それを踏まえての厚生労働省による改正法案の作成という流れをとるものと思われます。育児休業制度の見直しは、育児介護休業法のみならず、雇用保険法の育児休業給付の改正にもつながりますので、現在、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会においては、育児休業給付の見直しが審議されています。育児介護休業法と雇用保険法が、ワンセットで、改正されることになるのではないでしょうか。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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