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業種特化社労士の視点から(第25回『印刷業』)
<阿部 隆 氏>
印刷業界の過去と現状
印刷は、印刷物の普及とともに拡大してきた業界です。印刷物の増加が文明化のバロメータといわれた時期もありましたが、電子書籍やインターネットの普及に伴い、デジタル媒体需要が増加、その影響を大きく受けて紙媒体の需要は減退しており、印刷物単価下落が経営環境悪化に拍車をかけています。 データによる推移を見れば、2018年の印刷・同業関連出荷額は、前年比-5.3%の4兆8,061億円となりました。ここ数年は5兆円台を維持していましたが、ついに4兆円台にまで落ち込み、約20年間で4割弱も縮小しています。今後とも、市場縮小傾向は続き、個別企業の対応も印刷物製造に特化する企業と、セールスプロモーション支援にスタンスを変えていく企業に分かれています。実際、印刷設備を持たないファブレスの印刷会社も増加しています。 企業規模面では、98.5%が従業者100人未満の中小企業です。残り1.5%の100人以上の企業が出荷額の44.4%のシェアを占めています。半数を超える事業所(54.9%)が3人以下の規模となっています(2018年「工業統計調査・産業別統計表」より)。 印刷は主に書籍や雑誌の「出版印刷」、チラシやカタログ、ポスターなどの「商業印刷」、商品包装の「パッケージ印刷」、はがきや帳票類などの「事務用印刷」の4つに大別されています。さらに工程についても分業が進んでおり、例えば製本や、製版、表面加工等の一部工程を担う企業も多くなっています。出版印刷は、受注元が出版社であるため、大都市近郊に集中しており、東京都では地場産業となっています。他方、地方の印刷会社では企業規模にかかわらず、複数部門に対応する「総合印刷」のケースが多くなります。
印刷業界の特殊性と関わり方
印刷業は製造段階で分業が進んでいる他、印刷対象の物性によって、業界が細分化されています。紙印刷、金属印刷、プラスチック等の包装用紙の印刷がメインのグラビア印刷、段ボール印刷等極めて多様です。これらは、すべて「印刷」というワードでくくれますが、印刷対象が異なれば、印刷材料、顧客も全く異なり、必要な業務知識も大きく異なります。これらを合わせて、印刷同関連業としてみると、全国で印刷業17,967、製版業1,085、製本業1,469、印刷物加工業1,490、印刷関連サービス業199事業所(平成30年(2018年)工業統計 産業編)、減少したとはいえ、印刷・同関連業としては大小合わせ、22,000事業所以上あるのです。その中身は紙に対する印刷を行う企業が多いものの、多様性が目立つ業界です。現在、株式会社GIMSを通じて(代表は譲っている)、事業再生、経営革新、人事労務管理改革等経営全般について、多面的に取り組み、印刷業界唯一の専門コンサルティングファームとしての地位にあります。
今後の方向
明確なコンセプトと経営方針によって経営されるコンサルティングファームと、有資格者の専門家組織社労士法人・税理士法人とでは、方針・考え方・マネジメント等が大きく異なり、本来比較するものではないかもしれません。しかし、コンサルティングファームにおいて、外部有資格者ノウハウの位置づけは、業務遂行上の単なる機能の扱いとなり、市場で再調達が可能なものとされるので、独自の価値主張は難しいような気がします。我々は、印刷業界唯一の専門コンサルティングファームを標榜しながらも、基本的には有資格者によるパートナーシップで基本案件ごとにチームを組むようにしています。多少効率に問題があっても経験を積み上げることで、将来的には有資格者個人が自力でコンサルができるような能力アップを期待しているからです。 参加していただいているパートナーコンサルタントとの相互信頼・相互依頼をベースに、今後とも印刷関連企業の諸課題解決に貢献していく方針です。幸い、全国の印刷会社をはじめ、印刷機械メーカーや材料等の供給ベンダーとの協力関係も進んでおり、紹介件数が増加しています。近年印刷会社におけるテレワークの導入も進み、以前は難しかった経営アドバイスもZoom等の活用で、その都度訪問することなく行える状況となり、支援方法も多様な中での選択が可能となりました。当方は、先方企業の規模所在地にかかわらずお役に立てる体制を目指しています。印刷関連の課題解決で単独では困難なケースがあれば、ご照会いただければ、お役に立てるケースもあると思います。