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法令改正最前線(第42回『女性活躍推進法等の一部を改正する法律案』)

<滝 則茂 氏>

今回は、前回の続報になりますが、3月8日に国会に提出された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」を取り上げることとします。特に与野党で大きく意見が分かれる法案とは思われませんので、今国会で成立する公算が大きいものとみることができます。

1.報告書から改正法案へ

上記の法律案は、前回取り上げた「女性の職業生活における活躍の推進及び職場のハラスメント防止対策等の在り方について」(報告書)を受けて作成されたものです。「法律」という単位でみると、以下の5つの法律の改正が盛り込まれています。

  • ①女性活躍推進法
  • ②労働施策総合推進法
  • ③男女雇用機会均等法
  • ④労働者派遣法
  • ⑤育児介護休業法

2.改正法案の重要ポイント

①女性活躍推進法の改正

  • ●一般事業主行動計画の策定・提出義務を負う事業主の範囲を常用雇用労働者数300人超の企業から、100人超の企業へと拡大します。
  • 女性の職業選択に資する情報を公表する義務についても、適用対象となる事業主の範囲を常用雇用労働者数300人超の企業から、100人超の企業へと拡大します。また、この義務に違反した事業主が厚生労働大臣の勧告を受けても従わなかったときは、その旨を公表することができるようにします。

②労働施策総合推進法の改正(パワハラ対策に関する法制化)

  • ●事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることがないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなけれ ばならないとされます。
  • ●事業主は、労働者がパワハラに関する相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととされます。
  • ●上記の諸事項に関する労働者と事業主との間の紛争の解決については、個別労働紛争解決促進法の一部規定の適用が排除され、均等法と同様の特別規定が設けられたり、均等法の規定が準用されてい ます。
  • ●厚生労働大臣は、パワハラ防止に関する措置義務及びパワハラに関する相談等を理由とする不利益取扱い禁止に関する規定に違反している事業主に対し、勧告した場合において、その勧告を受けた者が従わなかったときは、その旨を公表することができます。

③男女雇用機会均等法の改正(セクハラ対策・マタハラ対策の強化)

セクハラ及びマタハラについて、パワハラと同様、労働者が相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととされます。また、この義務に違反した事業主が厚生労働大臣から勧告を受けても従わないときは、厚生労働大臣は、その旨を公表することができます。

④労働者派遣法の改正

労働施策総合推進法にパワハラに関する規定が新設されたことに伴い、同法の適用に関する特例を定める規定が新設されます。

⑤育児介護休業法の改正

育児休業等に関連するハラスメントにつき、セクハラ等と同様、労働者が相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととされます。また、この義務に違反した事業主が厚生労働大臣から勧告を受けても従わないときは、厚生労働大臣は、その旨を公表することができます。

3.施行期日

原則として、「公布日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされていますが、女性活躍推進法改正については、「公布日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」となっています。また、労働施策総合推進法の改正のうち、パワハラに関する措置義務に関連する部分は、中小事業主に限り、「公布日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」までの間は、努力義務とされています。

 

※本内容は、2019年4月発刊時点の情報となります。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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