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法令改正最前線(第41回『女性の活躍推進、ハラスメント防止対策等に関する報告書』)
<滝 則茂 氏>
今回は、昨年の12月14日に厚生労働省から公表された「女性の職業生活における活躍の推進及び職場のハラスメント防止対策等の在り方について」(報告書)を取り上げることにします。 この報告書は、昨年の8月27日以降、全10回にわたって行われた労働政策審議会雇用環境・均等分科会における審議の結果を取りまとめたものです。内容的には、
- ①女性活躍推進法改正に向けた提言、
- ②パワハラ防止対策の強化(法制化も含む)に向けた提言
が中心となっていますので、以下、この2点ついて、報告書のポイントを紹介します。
1.女性活躍推進法改正に向けた提言
現行の女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)では、常時雇用労働者数301人以上の企業に対し、以下のような義務を課していますが、常用雇用労働者数300人以下の企業にあっては、努力義務にとどまっています。
- ①一般事業主行動計画(女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する計画)を定め、これを厚生労働大臣に届け出る(計画を変更する場合も同様)。
- ②上記の一般事業主行動計画を定め、又は変更したときは、労働者に周知させるための措置を講ずるとともに、計画を公表する。
- ③女性の職業選択に資するよう、その事業における女性の職業生活における活躍に関する情報を定期的に公表する。
本報告書では、今後、社会全体で女性活躍を一層推進していく必要があるとの認識の下、101人以上300人以下の企業についても、法的義務にすべきだとの方向性が示されています。この点については、与野党とも異論がないと思われますので、比較的順調に、法改正が実現するものと思われます。 ただ、この法改正は、中小企業に新たな負担を強いるという要素がある以上、それなりの準備期間が必要になります。本報告書でも、働き方改革関連法の施行時期も踏まえ十分な準備期間を確保することの必要性が指摘されています。そのため、実際に施行されるのは、2021年または2022年の4月、この辺りになるのではないでしょうか。
2.パワハラ防止対策の強化に向けた提言
職場のパワーハラスメント防止について対策を強化すべく、本報告書では、以下のような方向性が示されています。
- ①事業主に対し、その雇用する労働者が自社の労働者等からパワハラを受けることを防止するための雇用管理上の措置を講じることを法律で義務付ける。
- ②パワハラの定義、事業主が講ずべき措置の内容等については、セクハラ指針や裁判例を参考にして、指針で明確化する。
- ③紛争解決の調停制度、助言・指導等と履行確保の措置については、セクハラ防止対策と同様に法律で規定する。
- ④パワハラは許されないものであり、国、事業主、労働者それぞれが、一定の責務を負う旨を法律で明確にする。
上記の提言を踏まえ、パワハラ防止について、法制化を含めた本格的な取組が、これから始まることになります。そもそもどの法律に条文を設けるのか(新法を制定するのか、既存の法律に組み込んでいくのか)等、法制化に当たっては、それ相応の課題が待ち受けていますが、パワハラを中心とするハラスメント防止策の強化が、今後の労務政策の重要課題であることは否定しようがありません。我々社労士としては、国の動きを受け身で待つのではなく、セクハラ対策等を参考に、今のうちから、積極的に対応を進めていくべきだと考えます。
※本内容は、2019年2月発刊時点の情報となります。