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法令改正最前線(第33回『働き方改革関連法案(その1)』)
<滝 則茂 氏>
厚生労働省が9月8日に労働政策審議会に諮問した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」について、9月15日、労働政策審議会の各分科会・部会は「概ね妥当」であるとの答申を行いました。その結果、当初、働き方改革関連法案は、9月28日から始まる臨時国会で審議される見通しとなっていました。ところが、安倍首相が臨時国会冒頭での「衆議院の解散」を決断したた め、当初の政府のプラン(秋の臨時国会で審議して、年内に法案を成立させる)は修正を余儀なくされています。とは言っても、近い将来、法案が成立する(多少の修正はあるかもしれませんが)ことは確実視されていますので、早めに法案の概略は押さえておく必要があります。 今回の改正法は、安倍内閣が提唱する「働き方改革」に関連する内容を一括したもので、以下の諸法律の改正を含んでいます。
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- ・ 労働基準法
- ・ 労働安全衛生法
- ・ 労働時間等設定改善法
- ・ 労働契約法 ・ 労働者派遣法
- ・ パートタイム労働法 ・ 雇用対策法(※)
- ※雇用対策法については、法律の名称も変更される(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)
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今回から数回に分けて、「働き方改革関連法案」を取り上げていきますが、まず本稿では、労働基準法改正のうち、一般の報道ではあまり取り上げられていない、①年次有給休暇に関する改正、②フレックスタイム制に関する改正について、法案要綱のポイントを解説します。
1.年次有給休暇に関する改正
従来、年次有給休暇については、労働者の「権利」として位置付けられており、労働者の時季指定がない限り、使用者が「労働者に年休を取得させる義務」は生じませんでした。 しかし、今回の法案要綱では、「使用者は、年次有給休暇の日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、年次有給休暇の付与後、1年以内の期間に時季を定めることにより与えなければならない」とされています。つまり、年間5日分の年休付与については、使用者としての義務が発生するということです。むろん、労働者の時季指定や計画年休による付与があった場合には、これらが優先しますので、「労働者の時季指定又は計画的付与制度により年次有給休暇を与えた場合は当該与えた日数分については、使用者は時季を定めることにより与えることを要しない」とされています。 この法改正が実現すると、当然のことながら、就業規則の変更が必要となります。また、厚生労働省令で、「使用者は、年次有給休暇の管理簿を作成しなければならない」旨を定めるとされていますので、社労士として、この点に関する指導が必要になることもあるのではないかと思われます。
2.フレックスタイム制に関する改正
フレックスタイム制は、「仕事と生活の調和」という時流にマッチした制度であるにも関わらず、普及率はずっと伸び悩んでいました。その一つの原因として、「清算期間1箇月以内」という設計が求められるなど、制度としての使い勝手が悪いという点があげられます。 そこで、今回の法案要綱では、「清算期間の上限を3箇月とする」こととし、規制を緩和しています。他方で、「清算期間が1箇月を超える場合においては、当該清算期間をその開始の日以後1箇月ごとに区分した各期間ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えない範囲内において労働させることができる」ものとし、労働者保護の要請との調和を図っています。また、1箇月を超える期間を定めた労使協定については、行政官庁への届出義務を課しています。 人出不足に悩まされている企業においては、育児・介護などの諸事情を抱えている方の活躍できる環境を整えることが、大きなテーマになってくると思われます。そのための一つの方策として、フレックスタイム制の採用を検討されるのもよいのではないでしょうか。
※本内容は、2017年10月発刊時点の情報となります。