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法令改正最前線(第27回『「働き方改革」関連の法改正に向けての動き』)
<滝 則茂 氏>
「一億総活躍社会の実現」をスローガンとして掲げる安倍内閣は、「働き方改革」の推進を最重要課題として位置付けています。皆様もご承知の通り、厚生労働大臣とは別に「働き方改革」担当の国務大臣が任命される一方、9月16日には、安倍総理大臣を議長とする「働き方改革推進会議」が設置されるなど、いよいよ「働き方改革」に向けての動きが本格化してきました。本稿では、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)を踏まえ、労働法関連の法改正の動向を概観することとします。
3つのテーマ
「ニッポン一億総活躍プラン」では、その2つ目の項目が「一億総活躍社会の実現に向けた横断的課題である働き方改革の方向」とされ、そこには、①同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善、②長期間労働の是正、③高齢者の就労促進、この3つのテーマに係る施策の方向性が示されています。以下に、そのポイントを紹介します。
①同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善
・多様で柔軟な働き方の選択を広げるため、非正規雇用労働者の待遇改善が急務であるとの認識の下、雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保すべく、同一労働同一賃金の実現に踏み込む。
・待遇差が合理的か否かに関する事例等を提示するガイドラインの策定を行い、その後で、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の一括改正等を検討し、改正法案を国会に提出する。
・改正法案は、不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定、非正規雇用労働者と正規労働者との間の待遇差に関する事業者の説明義務に関する規定の整備などを内容とする。
②長時間労働の是正
・労働の質を高め、多様なライフスタイルを可能にし、生産性の向上につなげるべく、長時間労働の是正に向けて背中を押すことが重要性であり、法規制の執行を強化する。
・労働基準法については、三六協定における特別条項につき、時間外労働の上限を設定することの検討を開始する。
・テレワークの推進、若者の長時間労働の是正を目指し、女性活躍推進法、次世代育成支援対策推進法の見直しを進める。
③高齢者の就労促進
・生涯現役社会を実現するため、雇用継続の延長や定年引上げに向けた環境を整備すること、就労を希望する高齢者のための就職支援を充実することが必要である。
・将来的に継続雇用年齢や定年年齢の引上げを進めていくため、企業の自発的な動きが広まるよう、65歳以降の継続雇用延長や65歳までの定年延長を行う企業等に対する支援を実施する。
今後の見通し
まず、先行するのが、非正規労働者の待遇改善に関するガイドライン作りで、これについては、年内の策定を目指しています。次に、非正規労働者の待遇改善に関する法改正(労働契約法・パートタイム労働法・労働者派遣法)については、2019(平成31)年度からの施行を目指しており、制度の周知期間を考慮に入れると、来年中には、国会に改正法案が提出されるものと思われます。 労働基準法の改正については、昨年の通常国会に提出され、現在継続審議扱いになっている改正法案があるため、見通しがはっきりしませんが、年内には方針(既存の改正法案を通してから新たな法案を提出するのか、既存の法案は審議せず新たな時間外労働に関する規制も盛り込んだ法案として提出し直すのか)が決定されるのではないでしょうか。 高齢者の継続雇用年齢や定年年齢の引上げについては、早期の法改正は困難であると考えられています。そのため、法改正までのつなぎとして、65歳以降の継続雇用延長や65歳までの定年延長を行う事業主に対する助成金の拡充等による支援が行われる予定です。
※本内容は、2016年10月発刊時点の情報となります。