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ヒストリーof社労士

» vol16. 社会的地位向上策はかる

 中断されていた旧2団体協議会は、事務局レベルによる話し合いを橋渡しとして報酬規定の統一問題から始められた。日社労はこれに先立ち6月の定時総会で定数の一部改正を行い機構改革を実施した。
 改正の内容は、入会時の資格審査の簡素化と、これまでの専務理事制度を廃止して常務理事2人制度を敷く  の二点が主な内容である。
 保険士会当時は、入会に際して手数料をとっていたが、2団体並立時代を迎えて会員拡充は会運営の上からも重要な問題であり、両団体とも会員獲得にはしのぎを削っており、そうした情勢を踏まえての簡素化である。
 また、事務局を総括する責任者として、理事の互選による専務理事制度があったが、事実上の会務は事務局長がとりしきっていた。これを常務理事2人制とし、繁忙化するであろう内外の情勢に対応した事務のスピードアップと対外折衝の強化をはかったのが改革の狙いであった。
 また、事業計画に積極的な開業社労士対策が盛り込まれた。日社労は46年度から社労士指導センターを設けて新規開業者育成に力を入れてきたが、その第1期生のうちから6人ずつによる第1・第2による合同事務所をこの年の10月、台東区で私の指導のもと店開きさせた。
 この社労士指導センターは、会員で新たに開業を希望する人、開業はしたがさらに資質の向上を目指す人たちを対象に、社労士業に必要な諸知識の修得と教養を高めるための研修を行うと同時に、開業の手引きを行うものである。
 日社労の理事として私は森下常務の開業者対策を重視、この指導センター構想を提案、実現させた。修習機関は2ヶ月だが、修習生は”学習”だけでなく、都内各所のベテラン開業社労士の事務所で”実習”を行う、つまりインターン制度を取り入れたのである。
 社労士の有資格者が開業しようとしても、現実には顧問先の開拓や事務所の設置など、多くの困難な問題が立ちはだかっている。こうした新規開業希望者のための研修制度は、定年退職者や脱サラ組の有資格者の間で大きな反響を呼び、第1期生は54人の多きを数えた。
 非開業者(企業内社労士)会員を多く抱えた日社労は、こうした対策に力を入れることで開業者団体への脱皮をはかったのである。
 このほか、厚生年金保険法30周年記念事業として、東京都保険部は都内各デパートなど7ヶ所で年金相談所を開き、この相談所に初めて社労士を登場させ好評をはくしたため、翌年度から都下の社会保険事務所全部に社労士を相談員として常設を決めている。

 

 さらに、日社労は年金時代の到来が目前に迫っていることにかんがみ、「年金指導員制度」構想を打ち出した。これは社労士の資質向上をはかると同時に、将来一定期間の研修を終えた者にテストを行い、合格者に「年金指導員」の資格を与えるというもので、日社労は社会保険庁に対しその法制化を積極的に働きかけた。
 このように日社労は、社会保険行政への社労士活用を強力に進めると同時に、開業者優遇措置の全国普及など開業者対策に本腰を入れ始めた年であった。
 一方、社労連も全国組織完成のメドがついて11月、失業保険(当時)や労災保険などの諸手続きについて、認承省略や離職票の受理手続きなどを社労士に認めるよう労働省に働きかける。いわゆる労働省サイドの優遇措置である。申請用紙に社労士押印欄を設けたり、独自に印判をデザインするなど、社労連の開業者対策も日社労に負けじと充実していった。
 48年1月・両団体は制度発足以来初めて共催による新春特別座談会を企画、両会機関誌に掲載している。
 出席者は労働省から大塚達一審議官、社会保険庁は今野恒雄総務課長、日社労は笠井勝三郎副会長、社労連は萱野喬事務局長で日社労の森下常務理事が司会した。
 席上、行政上に社労士を積極的に活用しようという役所側の公式見解が確認され、両団体一本化の方向が示唆された。
 こうした友好ムードを背景に両団体とも開業者対策を次々と打ち出していく。社会保険事務所、労働基準監督署、公共職業安定所の社労士名札掲示などもこのときに実現した。

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