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法令改正最前線(第72回 『児童手当制度等の改正』)
<滝 則茂 氏>
今回は、大幅な見直しが予定されている児童手当制度等、子育て支援関連の制度改正につき、社労士として最低限知っておきたいポイントを紹介します。法改正という点では、2月16日に内閣が国会に提出した「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」の中から、社労士業務との関わりが強いと思われるテーマをピックアップして解説することになります。この制度改正は、厚生労働省ではなく、「こども家庭庁」が主管官庁ですので、本稿も、同庁が公表した立法資料を踏まえて作成しております。なお、今後の政治情勢の推移によっては、国会で法案が修正される可能性もありますので、ご注意ください。
1.児童手当の抜本的拡充(2024年10月施行予定)
今回の制度改正の大きな目玉が、この児童手当制度の見直しです。児童手当を全てのこどもの育ちを支える基礎的な経済支援として位置付け、下記のような改正を予定しています。
①支給要件に係る所得制限を撤廃するとともに、一定以上所得者に対する特例給付を廃止します。
②支給期間を15歳年度末から18歳年度末(高校生世代)まで延長します。
③多子加算(第3子以降の加算)の適用範囲を拡大し、0歳~18歳年度末とするともに、金額を月額1万5千円から3万円に引き上げます。
【改正法案における児童手当】
| 3歳未満 | 3歳~高校生年代 |
第1子・第2子 | 月額1万5千円 | 月額1万円 |
第3子以降 | 月額3万円 | 月額3万円 |
④支給回数を年3回(2・6・10月)から年6回(2・4・6・8・10・12月)とします。
2.雇用保険の育児関連の給付の創設(2025年4月施行予定)
雇用保険法を改正し、以下の2つの給付を創設します。
①子の出生直後の一定期間(男性:子の出生後8週間、女性:産後休業後8週間)以内に、被保険者とその配偶者の双方が14日以上の育児休業を取得する場合に、被保険者の休業期間につき、28日間を限度に、休業開始前賃金の13%相当額を支給する「出生後育児支援給付」を創設します。これによって、この給付の支給期間については、既存の育児休業給付と併せ手取り10割支給が実現するとしています。
②被保険者が2歳未満の子を養育するために、時短勤務をしている場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を支給する「育児時短就業給付」を創設します。
3.国民年金の育児期間中の保険料免除制度の創設(2026年10月施行予定)
国民年金の第1号被保険者につき、子が1歳になるまでの期間、国民年金保険料を免除する措置を創設します。なお、この免除の期間の各月については、保険料納付済期間に算入されます。
4.新たな支援金制度の創設(2026年4月施行予定)
子ども・子育て支援法や医療保険各法(健康保険法、国民健康保険法など)等の改正により、少子化対策に受益を有する全世代・全経済主体が、子育て世帯を支える新しい分かち合い・連帯の仕組みとして、医療保険の保険料と併せて拠出する「子ども子育て支援金制度」を創設します。つまり、医療保険者は、医療保険制度上の給付に係る保険料や介護保険料と併せて、子ども・子育て支援金を徴収することになり、一方で、国民や事業主の「新たな負担」が発生することになります。国会の審議においては、この点が大きな論点になると思われます。