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法令改正最前線(第68回 『骨太の方針2023』)
<滝 則茂 氏>
今回は、6月16日に政府が公表した「骨太の方針2023」の中から、社労士にとって特に注目すべき事項を紹介することとします。
1.骨太の方針とは?
「骨太の方針」というのは、政府が毎年策定する「経済財政運営と改革の基本方針」の通称であり、内政面の改革の方向性を示すものといえます。今回公表された2023年度の方針は、「加速する新しい資本主義 ~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」という副題がついており、今後の法令改正等により、企業の人事労務に影響を与えそうな事項もいくつか盛り込まれています。
2.三位一体の労働市場改革
方針では、①リ・スキリングによる能力向上支援、②個々の企業の実態に応じた職務給の導入、③成長分野への労働移動の円滑化、という3項目からなる「三位一体の労働市場改革」を一つのスローガンとして掲げています。そして、それぞれの項目に関する施策の例としては、以下のようなものを指摘することができます。
まず、「①リ・スキリングによる能力向上支援」に関しては、在職者の学び直しの支援策として、5年以内を目途に、個人への直接支援の拡充を目指し、たとえば、教育訓練給付の拡充、教育訓練中の生活を支えるための給付の創設を検討するとしています。また、雇用調整助成金について、休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しやすくなるよう助成率等の見直しに言及しています。
次の、「②個々の企業の実態に応じた職務給の導入」に関しては、まずは、事例の整理を行い、企業が制度導入を行うための参考となるよう、中小・小規模企業の導入事例も含めた事例集を年内に取りまとめるとしています。
さらに、「③成長分野への労働移動の円滑化」に関しては、自己都合離職の場合の失業給付の支給制限に関し、失業給付申請前にリ・スキリングに取り組んでいた場合を会社都合離職と同じに扱うなどの制度の見直しを行う一方、自己都合退職の場合の退職金減額という労働慣行の見直しに向けた「モデル就業規則」の改正、退職所得課税制度の見直しについても言及しています。
3.最低賃金の引上げ
方針では、「家計所得の増大」を目指す取り組みの一つとして、最低賃金の引上げについて、具体的な方向性が示されています。すなわち、全国加重平均1,000円達成も含め、最低賃金審議会で、しっかり議論を行うと明記しています。また、目安額のランク数の見直し(4ランク⇒3ランク)に続き、今後とも、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率の引上げ等、地域間格差の是正を図るとしています。
4.多様な働き方の推進
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットを構築し、個々のニーズ等に基づき多様な働き方を選択でき、活躍できる環境を整備するため、週20時間未満の労働者に対する雇用保険の適用拡大について検討し、2028年度までを目途に実施するとしています。また、良質なテレワークやビジネスケアラーの増大等を踏まえた介護と仕事の両立支援の推進、勤務間インターバル制度の導入促進、メンタルヘルス対策の強化等の働き方改革を一層進めながら、副業・兼業の促進、選択的週休3日制度の普及等に取り組むとしています。