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法令改正最前線(第64回『賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージ』)
<滝 則茂 氏>
今回は、10月28日に厚生労働省から公表された「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージについて紹介します。これは、岸田内閣が「新たな総合経済政策」の一環として打ち出した雇用・労働に関する施策の総称であり、助成金の拡充(創設を含む)等が中心的な内容になっています。そのため、「法令改正」という見地からは、国会での議決が必要となる「法律」の改正ではなく、厚生労働省令(たとえば、雇用保険法施行規則)の改正が中心となると思われます。また、11月8日に公表された「令和4年度厚生労働省第二次補正予算案の概要」(以下、「第二次補正予算案」と記載します)をみると、既に具体的な予算額が示されている施策もありますので、それらの施策については新年度(令和5年度)を待たずに、今年度の途中から施策が現実化するものと思われます。
1.打ち出された施策の4つの柱
今回打ち出された政策パッケージの大項目と中項目は、以下のようになっています。
①労働者の賃上げ支援
②人材の育成・活性化
(1)個人の主体的なキャリア形成の促進
(2)新たな経験を通じた人材の育成・活性化
(3)ステップアップを通じた人材活用
③賃金上昇を伴う労働移動の円滑化
(1)労働市場の強化・見える化
(2)賃金上昇を伴う労働移動の支援
(3)継続的なキャリアサポート・就職支援
④多様な選択を力強く支える環境整備・雇用セーフティネットの再整備
(1) 次なる雇用情勢の悪化に備えた雇用保険財政の早期再建
(2)フリーランスが安心して働くことができる環境整備
(3) 働き方・休み方の多様化、複線的なキャリア選択へ対応
2.注目すべき施策
社労士の実務との関わりで特に注目すべき施策を紹介します。既に第二次補正予算案で、具体的な予算額が計上されているものについては、項目の後に「*」を付してあります。
①労働者の賃上げ支援
・業務改善助成金の拡充(*)
この助成金は、中小企業の事業場内最低賃金の引き上げを促すものです。第二次補正予算案で、既に100億
円の予算がついています。
・キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
非正規雇用労働者の処遇改善のため、助成基準の見直し、助成額の拡充を実施するとの方向性が示されてい
ます。
②人材の育成・活性化
・産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)(仮称)の創設
この助成金は、賃金上昇につながる在籍型出向によるスキルアップを支援するため、出向元企業に対し、賃
金を助成するものです。
・産業保健関係助成金を活用した労働者の健康促進支援(*)
小規模事業場等が産業保健サービスを提供する活動への助成(たとえば、ストレスチェックを実施した50
人未満規模の事業場への助成)を行うものです。
③賃金上昇を伴う労働移動の円滑化
・中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)の見直し前職よりも5%以上賃金の上がる中途採用を促進す
るため、要件の見直しを行うとされています。
・求人者に対する求人条件向上指導の強化
ハローワークが、地域の労働市場の動向等を踏まえながら、求人賃金等の条件向上指導を強化するとの方針
が示されています。
④多様な選択を支える環境整備・雇用セーフティネットの再整備
・フリーランスに係る取引適正化等のための法整備
フリーランスの取引を適正化し、個人がフリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、関係官庁
と連携して法整備に取り組むとしています。