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法令改正最前線(第36回『働き方改革関連法案(その4)』)
<滝 則茂 氏>
今回は、「働き方改革」の一つのテーマとして取り上げられている「副業・兼業の促進」について、これまでの動きを時系列に沿って整理してみることとします。副業・兼業の問題は、法令改正に直ちに結び付くテーマではありませんが、今後の労務管理の展開を考えていく上で、避けて通ることのできない課題であると思われます。
1.「働き方改革実行計画」における位置付け
平成29年3月28日に公表された「働き方改革実行計画」の第5項目「柔軟な働き方がしやすい環境整備」の中に、「副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改定版モデル就業規則の策定」が盛り込まれています。ここでは、原則として「副業・兼業を認めていく」という方向性が示され、それに向けて、以下の事項に取り組んでいくとされています。
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- ①ガイドラインの策定
- ②モデル就業規則の改定
- ③先進事例の紹介
- ④雇用保険・社会保険の公正な制度の在り方、労働時間管理
- ⑤健康管理の在り方、労災保険給付の在り方についての検討
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2.「柔軟な働き方に関する検討会」における検討、報告書の公表
上記の実行計画を受けて、平成29年10月から、厚生労働省が主催する「柔軟な働き方研究会」が6回実施され、テレワーク(雇用型テレワーク・自営型テレワーク)、副業・兼業といった柔軟な働き方についての検討が行われました。この会議の中では、副業・兼業の促進に関するガイドライン案、モ デル就業規則改定案が提示されています。そして、12月25日に検討会での成果を取りまとめた「『柔軟な働き方に関する検討会』報告」が公表されています。 この報告書では、労働者の主体的な働き方の選択肢として、副業・兼業を積極的に捉え、今後の環境整備を促進していくことの必要性・重要性が示されています。また、労働時間通算についての在り方の見直しなど、副業・兼業に関わる制度的課題についても示されています。
3.副業・兼業の促進に関するガイドライン、改定モデル就業規則の公表
本年1月末に、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」、改定された厚生労働省「モデル就業規則」が公表されました。
<ガイドライン>
このガイドラインでは、まず、
- ①副業・兼業の現状(希望者は増えているが、企業は消極的)、
- ②副業・兼業の促進の方向性(労使にとってのメリット、留意点など)が示されています。その後で、
- ③企業の対応(副業・兼業を認めることを前提とした労務管理上の対策)、
- ④労働者の対応(企業とのコミュニケーション、主体的な健康管理など)、
- ⑤副業・兼業に関わるその他の現行制度(労働保険・社会保険の取扱いなど)について述べられています。
社労士実務との関わりでみると、「企業の対応」が大きなテーマになります。ガイドラインによれば、現状で副業・兼業を許可制としている企業は、副業・兼業が自社業務に支障をきたすものかどうか今一度精査し、そのような事情がなければ、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められるとされています。また、副業・兼業を認める場合、労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、長時間労働といったリスクを確認すべく、副業・兼業の内容等を労働者に申請・届出させることも考えられるとしています。具体的な論点としては、就業時間の把握、健康管理などが取り上げられています。
<モデル就業規則> 厚生労働省のモデル就業規則の最後の条文(67条)として、副業・兼業に関するモデル規定が設けられています。この規定では、勤務時間外における他社業務を承認しつつ、事前の届出は必要としています。また、以下のいずれかに該当する場合は、他社業務の禁止・制限が可能とされています。
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- ・ 労務提供上の支障がある場合
- ・ 企業秘密が漏洩する場合
- ・ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
- ・ 競業により、企業の利益を害する場合
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※本内容は、2018年4月発刊時点の情報となります。