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法令改正最前線(第40回『高齢者雇用促進に向けての方向性』)

<滝 則茂 氏>

今回は、未来投資会議で示された高齢者雇用促進に向けての方向性について紹介することとします。この未来投資会議というのは、内閣総理大臣を議長とする会議で、「成長戦略の司令塔」の役割を果たすものと位置付けられています。 10月22日に開催された第20回未来投資会議では、「高齢者雇用の促進」が一つのテーマとして取り上げられ、今後の方向性が示されました。 本稿においては、まず、「働き方改革実行計画」で高齢者雇用がどのように位置付けられているかを確認し、それを踏まえ、未来投資会議で打ち出された今後のアクションプランを紹介します。

1.働き方改革実行計画における「高齢者の就業促進」の方向性

2017年3月28日に公表された働き方改革実行計画においては、その11番目の項目として、「高齢者の就業促進」が打ち出されています。ここでは、高齢者に対し、多様な就業の機会を提供していく必要があるとの認識の下、以下のような方向性が示されました。 「65歳以上の継続雇用延長や65歳までの定年延長を行う企業への支援を充実し、将来的に継続雇用年齢等の引上げを進めていくための環境整備を行っていく。2020年度までを集中取組期間と位置づけ、助成措置を強化するとともに、新たに策定した継続雇用延長や定年延長の手法を紹介するマニュアルや好事例集を通じて、企業への働きかけ、相談・援助を行っていく。集中取組期間の終了時点で、継続雇用年齢等の引上げに係る制度の在り方を再検討する。」 要は、「将来的には高年齢者雇用安定法の改正が必要であるが、直ちに法改正の検討を行う環境にはないので、当面は、将来の法改正に向けた環境整備(助成金の充実など)に取り組んでいく」、こういった趣旨です。また、添付された工程表を見ますと、制度の在り方の再検討については、2020年度に行うとされています。  

2.未来投資会議で打ち出されたアクションプラン

10月22日の第20回未来投資会議では、「70歳までの就業機会の確保」がクローズアップされ、「65歳以上への継続雇用年齢の引上げについては、高齢者の希望・特性に応じて、多様な選択肢を許容する方向で検討する」という方針が打ち出されました。そして、今後のアクションプランとして、以下のような方向性が示されています。

  • ①実行計画の策定 まず、第一段階として、具体的制度化の方針(工程表付きの実行計画)を来年(2019年)の夏までに決定するとしています。つまり、高年齢者雇用安定法改正に向けて、その内容に関する方針を決定し、その後のプロセスに関する工程表も公表するということです。先に紹介した働き方改革実行計画の工程表では、2020年度に制度の在り方の再検討とありますから、1年前倒しにして検討する趣旨だと思われます。
  • ②労働政策審議会の審議 労働関係法令の改正ですので、当然のことながら、労働政策審議会に諮り、そこで審議するというプロセスが必要となります。
  • ③国会に改正法案を提出 今のところ、その時期ははっきりしませんが、最速でも2020年の通常国会ということになると思われます。

3.今後の見通し

継続雇用年齢の引き上げについては、経済界には根強い反対意見があります。しかし、政府としては、年金の支給開始年齢の引き上げの前提として、この高齢者雇用の問題について、早期に方針を固め、法改正に踏み切りたいと考えているでしょう。もちろん、改正法の成立から施行までには、相当な準備期間が必要となりますので、高齢者雇用に関する新制度が実施されるのは、数年先のことになると思われます。

 

※本内容は、2018年12月発刊時点の情報となります。

社会保険労務士法人LEC代表社員
特定社会保険労務士 滝 則茂 氏

中小企業福祉事業団幹事。東京都福祉サービス第三者評価評価者。
名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1989年社会保険労務士登録。2007年特定社会保険労務士付記。東京リーガルマインド主任研究員として、企業研修、職業訓練、資格取得講座などの企画、教材開発、講義を担当。2003年4月より、社会保険労務士法人LECにて、労務相談、就業規則関連業務などに従事する一方、社労士向けセミナーの講師として活躍中。

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